猥褻な季節

髪の毛をピンクに染めた。

これは数多のタトゥーやピアスと同じように、名前を持った自分を捨てて軽やかな身に解脱を願う祈りのようなものだ。

デカい犬が好きだ。可能であるならば、屋号をデカい犬本舗にしてもいい。アリストテレスも言っていた、美は大きさと秩序のうちに存在すると。

デカい犬はそれそのものであるだろう。

いつか抱いた希死念慮は、薄氷のようにいつまでも体の裏側に張り付いている。

春、天気が良すぎて麗かで、街行く人の顔はどこか朗らかで、私は死にたいが加速する。

遮光カーテンを閉め切った部屋で、どうか早く夜になりますようにと願いながらうたた寝をした。

生まれ変わるのならば、きっとたんぽぽがいい。健やかな陽光に恨めしさなど抱かずに、ただ健気に生きたかっただけなのに。