その水は琥珀の色をしていた

レコード屋も古本屋もない町に生まれた。

この町には何もないのに空は狭い。

 

「自由じゃないから 不幸なのかどうか」

「あるいは私は不幸だから自由じゃないのか」

昨日見た映画のワンシーンが頭のずっと奥で蠢いているのは気のせいだろう。

 

胃の底の方に沈む何かに対する不安は、時折ぷかぷか顔を出す。息をするために水面を目指す鯨みたいに。